| 祈り | ただ祈る小さな音を拾いつつ運がいいとか・・・受験の息子に キッチンに買い求めたるおやつの名「キットカツぞう」「うカール」「TOPPA」 がんばれと息子の背につぶやきて心と身体のバランス支う 頑張りにプラスα神頼みセンター試験に子は「道真」と 受験終え「追いつけてない」と肩落とす過ぎ来し日々を悔いるな息子 「母さんの笑顔はビタミンみたいだ」と肩をたたいて子は出かけゆく B型の優柔不断もまた可とし何があっても笑っていよう 時間とう魔法の言葉つぶやきてミヒャエル・エンデの「モモ」をまた読む |
| デリカシー | 思えども言葉にはせず過ぎゆきぬ風に葉擦れの松の声(ね)となれ 見上げたる空より落つるは涙雨ただ理不尽なる言葉聞く日に 繰り返し夕とどろきの起き来ればあやにく心も呼び起こされて つぶやきぬ春の朧の月の夜やわらかにあれ心ひとつも おさな子は大人の言葉拾うらしデリカシーなる菓子を探しぬ 聞き耳にデリカシーとう菓子探すおさなに笑い消ゆるかなしみ |
| 震災 | 学童保育(がくどう)の児らを守りてカウントす地震(ない)の収まるまでの100秒 校庭に余震におびゆる児らあまた手をにぎりあい肩を寄せあい 大地震(おおない)の余震の中に父母と再会果たす子らの涙の 「どこまでも道は続くと思うから前に進めた」ことに気づきぬ 今できることのみ思う時をゆく出来ぬは見ずに憂えずにゆく 被災者となりて給水待つ時間生き居る人の列に7時間 |
| 復興の青 | 震災に今在ることのみ思う日々がんばれることは幸せなこと 震災後ひと月を経て再開の学童クラブに笑顔が戻る 学童の児らに笑顔の戻りゆく余震に肩の力抜けずも 原発におびえ余震にふるえるも「後ろ向きでは歩きにくいし」 瞳(め)に映す空の青さと陽のぬくみ復興に向け「はじめの一歩」 うす紅の花びらひらり手に受けて見上げし春は復興の青 |
| 分限 | 「そうだった…」呼吸ととのう病室の壁の白さの際立つ朝 何事もなかったような朝が来た白き光に白衣に点滴 腫れ上がるまぶたに血潮の筋あまた体温少し上昇ぎみに 朝が来るその日常を噛み締めぬ病室の窓が切り取りし景 整いし呼吸に不安はなかりしも医師の動きを靴音に追う 無理と無茶 境界線は透明な点滴の管に引かれし既存に |
| 傘かしげ | 追悼の鐘の音おもく響きたり光を遮る雲におおわれ 震災の復興のうた紡げども哀しみのみが縦糸に浮く 憧れの師より遺されし言の葉は心めぐりて陽だまりとなる 一歩ずつただ一本の道をゆく仰ぎし人に褒めて欲しくて 紫陽花の細道ゆきかう傘かしげきみが微笑みきみがやさしさ 心根のやさしさ常に持ちたきと出会いにおもう思草(しぐさ)言の葉 |
| 七月の失意 | セシウムという名に見えぬ不安抱くゆがんだ街に佇むばかり 崩れたる壁そのままに平衡を保てずにある汚染を憂い ははははとおおどかなりし人は消ゆ思い描けぬは7月の失意 暑いねと言いて続かぬ言の葉に冷凍みかんの水滴も落つ ざらざらと口の渇きを舌にきく続けられない会話が刺さり 心までゆがまずにあれ空を見よ確かに今日の陽が昇るから 震災に戻らぬ景色は胸に置き若きらに育つ沈まぬ心 エリちゃんも泣いてるけれど立ってるよ児らの遊びに強さを聞きぬ |
| 別れの道理 | 「目に見えるものだけを追う男だから」別れの道理をつぶやく友は この街をさびしき街と振り返り南に発ちゆく友を見送る 友の言うさびしき街に残されてさびしきままに生くる人々 欠けし月 二十余年の時を捨て発ちゆくは友 残さるるも友 つぶやきぬ破鏡ふたたび照らさずと心の奥処に涙とどめて アドレスの消去ボタンを押す友のひとみの光もプツと消えゆく |
| しりとり | ひいふうみ負いたるものの増えゆくも不可逆な時をつつみてゆかな 不可逆な時のながれに泣くこころセラミックナイフ玉ねぎ刻む 刻みたる玉ねぎ炒めとろとろり甘味残して生まれ変わりぬ 変わりたることを懼れず見渡せばうすく色変えもみじ照り映ゆ もみずる葉 地震原発台風のふりかかりしも秋風は立つ 風立ちぬ「おはよう」「またね」「ただいま」と児らの笑顔に憂い飛ばされ |
| 包む | 過ぎ去りし日々を包みてとりどりのパーツを縫いぬパッチワークに 個性派の生地を集めて仕上がりしキルトのポーチこの手に包む こもごもの心の渦を包み込みシフォンケーキはふわりと焼ける 悲喜ともにシフォンケーキはふんわりと空気のつぶを包み込みたり このほしのまるさをおもえるわれなればつつめぬものなどなしとしんじて 夕暮れの空がひと日の悲しみを包みて沈む明日晴れるため |
| 詠む | われの名はなべて心に添わせゆき詠いて生きよと父が名付けし 詠うとう名をいただきて半世紀うた詠みてなおいかに生きなん ちちははの逝きて残さるるわが名前いくたびも思うあふるる愛を 悔やむこと悲しきことのあるときも詠えば心たしかに温し 取り巻ける人・もの・時間ときどきに苦しくもあれば楽しくもあり きみのもつ軟き心とかたき意志 会話すすむもメビウスの帯 |
| 噛みしめる | 北へ北へ 県境なるトンネルに呑まれて出でしFUKUSIMAの街 まだ美(は)しきものの残ると知りし年 震災に哭く 人 癒すひと いつまでを震災の後というのだろう 偶さか抱えし傷癒ゆるまで? 本質の何たるかさえ知らぬままやさしさとはと言うなかれキミ 探したりホントのやさしさ持ちしはと「トレロカモミロ」勇者の歌に 冬の陽の影に作りしファイトの手 がんばれ私!噛みしめる歯を 限りなき思いのままに元気かとたずねしメール心尽くして 刷毛雲のうすさに気づける目見なれば明日吹く小さき風も聞こゆと |
